ノイズトランジスタの実験
先日、プロトタイプ!?を製作したPollard Syndrumクローン基板ですが、実はオリジナル回路にはノイズを入力する端子があって、どうもこの辺りにあの独特アタック感の秘密があるのでは?ということで、Syndrum用のノイズジェネレータを作ることにしました。
ノイズソースとしては、PICやMM5837などを使用したPN方式が確実で簡単ですが、今回はトランジスタの逆バイアス(Vbeバック)を使った方式を採用することにしました。
しかし、トランジスタの逆バイアスを利用したノイズ発生法については、通常のトランジスタの使い方ではない(一歩間違うと壊れる!)ため、参考となる文献や資料が極度に少ないようです。(いい文献があれば、ぜひ教えてください)
国内のシンセDIY'erの中ではノイズトランジスタとして、かつてRolandで採用された2SC828が百発百中に近い確率で高いノイズが出ることで有名?(Farm LFO ⅡtakedaさんのHome Made Synthより)ですが、以前から、もっと現行品でポピュラーな石使えないか非常に興味があるところでした。
また、ノイズレベルと逆バイアス電流(アバランシェ電流)の関係などについても、ノウハウとしてぜひ知りたいところでもあります。(メーカーさんの過去の技術資料の中には埋もれているのかな?)
そこで以前、chuckさんの電音の工場 @ g.E-Musicで同様な実験記事(さらにノイズ)を参考にして、簡単なノイズトランジスタのテスト基板を製作し、さまざまなトランジスタや逆バイアス電流を変化させた実験をしてみることにしました。
テスト基板は、トランジスタを容易に交換できるようワニ口クリップで挟む方式とし、さらにジャンパーで逆バイアス抵抗を100k、330k、1M、3.3Mを選択出来るようにしました。これにより電源電圧が15Vで、仮にトランジスタのブレークダウン電圧を10V程度としたとき、逆バイアス電流はそれぞれ、約50uA、15uA、5uA、1.5uAとなります。さらにテスト回路は、トランジスタで発生したノイズをオペアンプ2段で電圧利得約46dB(約200倍)増幅して、ノイズを約数Vp-pオーダーまで増幅しています。
実験に使用したトランジスタは、手元にあったポピュラーなトランジスタを使いました。この実験では、トランジスタに逆バイアスをかけるので、実験に使ったトランジスタは他には使えない(使えるかも知れないが、使いたくない)ため、勿体なくサンプル数を増やせないところがつらいところではありますが・・・
2SA733Q (hfe=135~270) ・・・ 2個
2SA1015GR (hfe=200~400) ・・・ 3個
2SC945Q (hfe=135~270) ・・・ 2個
2SC1815GR (hfe=200~400) ・・・ 3個
2SC1815Y (hfe=120~240) ・・・ 2個
実験結果は次のとおりで、以外にもPNP陣営がすごいノイズ量を発生しています。
ノイズトランジスタ実験結果
(ノイズ電圧はオペアンプで200倍したピーク電圧値)
なお、ノイズ量はオシロスコープでピーク値を観測したものであり、主観誤差が含まれていることをご承知おきください。ちなみに実効値は約1/6程度になると推定されます。
NPN陣営も特に選別したわけではないですが、換算すると約10mVp-p程度のノイズ発生量が得られています。
バイアス電流との関係ですが、2SA733と2SC945は10~20uA程度でノイズ量が最大になり、これ以上流すと逆に低下傾向を示します。この2つのトランジスタは、再び逆バイアス電流を10uA程度に下げても元のノイズ量に戻らないこともわかりました。これは数10uAの降伏電流で素子内部に何らかの破壊が起きているためと推定され、2SA733および2SC945を使用する場合には、バイアス抵抗を1MΩ以上に選定する方が無難と考えられます。
ちなみに、2SA733はKORG社のMONO/POLY等で、2SC945はRoland社のJupiter-8、JUNO-106等で選別品が使われていました。
これとは逆に2SA1015と2SC1815は、100uA程度まで逆バイアス電流を流すほどノイズ量が増える傾向のようです。これは耐降伏特性が2SC945などに比べて強くなっているものと考えられます。
実験では、PNPトランジスタの方が高いノイズ出力が得られていますが、波形をオシロで観測するとNPNトランジスタのノイズの方がキメが細かい美しいノイズ?ような気がします。(周波数特性がよりフラット?)
原因は良くわかりません。
トランジスタの構造上、1/f成分がPNPの方が高いとか・・・ > 詳しい方教えてください<(_ _)>

2SA1015GRのノイズ波形

2SC1815GRのノイズ波形
聞いた感じではあまり違いがはっきりしないのですが、PNPトランジスタの方が高いノイズレベルが出やすいのに、NPNトランジスタがノイズソースとして多く機種で採用されていたのは、この辺と何か関係があるのでしょうかねー?
もしかして、使ったオペアンプ(LM358)のSRの問題だったりして > もうちょっといいやつを使いませう(笑)
あ~、長文になってしまいました(^_^;)
本家に書くべきだったかな?



コメント
2SC828いくつかありますよ。腐りそうなほど・・・。選別済みの2SC945が1つJuno6のジャンクからひっぺがしたのがあります。
投稿者: 所長 | 2005年10月10日 17:51
そのたくさんある2SC828を使って、来週までに2SC828の特性についてレポートを提出しなさい。なんちゃって(笑)
2SC828(A)と言えば、昔、松下のテレビを分解すると必ず入っていると言っていいほど大量に使われていました。テレビでは発振、増幅など用途を選ばないオールマイティな石だったような記憶があります。
投稿者: RJB | 2005年10月10日 18:32
PNPトランジスタのほうがノイズレベルが大きいとは面白いですね。
僕は、間違えて買った2SC5548Aをノイズのレベルが大きいという理由で使いましたが、マエストロのフィルターで実験していたときの感じだと2SC1815を使ったときのほうがサンプルホールドしたときの音程のばらつきが大きな気がしました。
きめ細かい美しいノイズ?のおかげでしょうかね?(笑)
投稿者: r0r0 | 2005年10月11日 00:26
長文にお付き合いありがとうございます。
「バラツキ」については、トランジスタの種類によって、レベルだけでなくノイズの「キャラクタ」も多少は違うのかもしれませんね。
トランジスタ毎に確率分布(標準偏差とか)を調べてみたくなりました・・・ってどうやって調べる???
投稿者: RJB | 2005年10月11日 22:41
素晴らしいレポートです。とても参考になります。紹介エントリを書いてトラックバックしました。
(昨日はココログがメンテ中だったようなので、今日にしました)
投稿者: Chuck | 2005年10月12日 09:10
ありがとうございます。
僕もネット上ではいろいろ勉強させて頂いているので、シンセDIYのノウハウの1つとして還元できれば思っています。
投稿者: RJB | 2005年10月12日 22:46